はてしなき叫び

Endless Scream

近年、強引な理屈で他国を侵略したり、自国民に平然と銃を突きつけ言論を封殺したり、問題解決の糸口を見つけられないままお互いを殺しあったり、自分に都合が悪いものは全てフェイクニュースと決めつけ全く聞く耳を持たないなど、これが本当に現代社会なのかと疑いたくなることが多数ある。事はそう単純なものではないのかもしれないが、これでは相当に私たちの未来は暗い。

そんな思いから今回のグリーン展2023 vol.28ではその表現として当初、人の理性の境界が崩壊しあらゆるものを飲み込んでいる、いわゆるブラックホール化しているのでないかと捉え、蟻地獄はどうかと考えた。しかし、昨年のロシアによるウクライナへの侵略、つい最近のパレスチナとイスラエルの衝突など、繰り返される人間の愚行と悲劇、それを象徴するのは爆弾の爆発跡の方がより人間の悲劇性が伝わるのでないかと思いその表現で行くことにした。

実際の制作にまず用意したのはA3よりひと回り大きいプラスチックのケース。そこに土を入れて人の顔の形に掘ろうとしてその土で大いに悩む。きれいに型取りしたかったので鋳物砂がいいのではと思ったからだ。ネットで売ってはいたが粒が細か過ぎてどうもイメージとは違う。結局色々と思い悩んでホームセンターに売っている赤土を使うことにした。実際の作業は土や砂の飛散なども考慮してオープンになっているガレージスペースで行った。

プラスチックの収納ケース
赤土を突き固めたところ

顔は当初、シンプルな横顔にしようと思っていたのだが、より印象を強めるため叫んでいる顔にした。顔の目・鼻などの比率は人種や性別の違いが出ないようニュートラルなものにした。最初に赤土をプラスチックのケースに入れ掛矢で突き固めたあと、ボードに切った顔に沿って掘り進めた。比較的上手く掘れたのだが、穴に線状の筋跡を付けようとすると崩れてきた。何か土を固めるいい方法ないかと色々と考え、とりあえず赤土には粘土質も含まれているだろうと思い、霧吹きで水を吹きかけ小型シャベルで押し固めてみた。そのやり方は比較的うまくいった。

人の叫んでいる顔の形にボードを切り抜く
横顔の型に沿って掘り進める

表面には荒れた質感が欲しかったので神通川の川辺りで拾ってきた砂を、掘った穴には入らないよう切り抜いてあったボードの顔を上からかぶせ、フルイを通しかけていった。そこにも爆発で飛散して見えるよう放射状の跡をつけていった。

神通川の砂をかける

撮影はいつも協力していただいている室澤さんにお願いし、光をコントロールしなければならないので夕方から行った。ライティングも色々試行錯誤し、印象を強くするため水平に近い角度から光を当てることにした。実際にやってみなければわからないことが多い撮影だったがなんとか目的の水準までには仕上がったように思う。

実際の撮影現場

このブログを書いている段階でイスラエルによるパレスチナへの空爆はますます激しいものになっている。双方の死者数は1万人を超えたようだ。このニュースに触れるにつれてやり場のない感情が湧き上がってくる。この叫びは自分自身の内なる叫びでもある。

完成したポスター